不動産購入時に土地の地盤調査は必要？液状化リスク確認方法も解説

地盤リスクの基礎知識と確認の重要性

不動産購入の際、まず知っていただきたいのが「地盤」の安全性です。地盤は建物の土台となるだけでなく、住まいの安心や資産価値にも大きく関係します。不安定な地盤では建物が傾いたり、ひび割れが生じたりする恐れがあり、購入後に想定外の補修費やトラブルが生じる可能性があります。また、宅地建物取引業法では「土砂災害警戒区域」など、地盤に関するリスクを重要事項として説明する義務があるため、購入前に地盤の状態をしっかり確認することは、安全かつ適切な取引のために欠かせません。

地盤に関わる代表的なリスクには、以下のようなものがあります。一つずつ特徴を理解しておきましょう。

液状化は特に、埋立地や旧河道などの柔らかい砂質地盤で地下水位が高い場所に起こりやすく、建物が傾いたり設備が浮き上がるなどの深刻な被害を引き起こす可能性があります。また、不均一な地盤では不同沈下が起こりやすく、基礎や壁にひび割れが起こるだけでなく、契約不適合責任が問われるケースもあるため注意が必要です。さらに、崖崩れや土石流といった土砂災害も、災害マップ等で事前に確認すべき重要なリスクです。

購入を検討する際は、まず液状化や不同沈下、土砂災害などの基本的なリスクを把握し、それぞれの特徴や影響を理解することが大切です。この基礎知識をもとに、さらに詳しいリスクの確認や対策を進めていきましょう。

公開情報でできる自己チェック方法

不動産購入前に、ご自身で地盤リスクを確認される際には、様々な公的・民間の情報源や地図が大変役立ちます。まず、公的な防災情報としては、市町村や国が提供する「ハザードマップ」によって、洪水や土砂災害の可能性を把握することができます。さらに、国土地理院の「地理院地図」では、旧河道や盛土・切土などの地形分類図（治水地形分類図）を確認でき、土地の成り立ちに基づく浸水や液状化のリスクを知る手がかりになります。特に旧河道では軟弱地盤や浸水リスクが高まりやすいことに注意が必要です。

また、防災科学技術研究所が提供する「J‑SHIS Map」や「J‑SHIS Map R」では、地震に関する様々な情報が確認可能です。たとえば、震度の超過確率や地盤の揺れやすさ（地盤増幅率）、さらには深部・表層地盤の構造などを地図上で閲覧し、ダブルクリックで250メートルメッシュ単位の詳細を得ることもできます。これにより、建物被害の確率や人的被害の見積もりなどを把握することが可能です。

さらに民間による無料で利用可能なツールとして、「地盤サポートマップ」があります。ここでは、液状化や洪水、浸水のリスクが視覚的にわかり、加えて年代ごとの航空写真から土地の変遷をたどることもできます。これにより、過去に造成された土地や川の跡など、地盤の性質を読むヒントを得ることができます。

これらの情報は、いずれも専門的な知識がなくても地形やリスクを視覚的に理解しやすいため、不動産購入を検討する方にとって非常に有用です。まずは、ご購入予定の場所を中心として複数の情報源を見比べることで、地盤に関する理解が深まり、安心して次のステップへ進む手助けとなります。

専門的な地盤調査の必要性と選び方

不動産を購入する際、地盤の安全性を正確に把握するためには公的情報だけでなく、専門的な地盤調査の実施が不可欠です。特に戸建住宅の場合、小規模建築にも対応しやすく費用や時間の点で効率的な「スクリューウエイト貫入試験（SWS試験）」が広く活用されています。この試験は、先端にスクリューポイントを装着したロッドを荷重と回転の両方で地中に貫入させ、その硬軟や締まり具合を測定し、換算Ｎ値や土層の状態を把握できる手法です。簡便かつ安価で短時間に調査が可能であり、住宅購入の初期段階における地盤の基礎評価として適しています。

液状化リスクや不同沈下など、地盤リスクをより詳しく知るためには、調査手法の選定が重要です。例えば、液状化の可能性を評価するには、土質や間隙水圧を測る能力がある「三成分コーン貫入試験（CPT）」が有効です。一方、標準貫入試験を併用するボーリング調査は、土壌試料に基づく地質判定や地下水状況の把握が可能であり、詳細な分析が必要な場合に適しています。

地盤調査を依頼するときには、以下のような点にも注意が必要です。調査範囲が敷地全体を適切にカバーしているか、調査方法や工法が目的に合っているか、そして費用や報告書の中身が明瞭かどうかを確認しましょう。例えば、SWS試験は結果の報告がシンプルで分かりやすいですが、硬い礫層ではデータが不正確になることがあります。そのような場合には、地下水や土質をより詳しく測定できる別の方法の併用が望ましいと言えます。

調査結果を受けた次のアクションと注意点

地盤調査の結果を受けたあとは、安全な住宅を建てるために適切な対応を検討することが大切です。まず、調査結果によっては、どのような基礎形式が適切か判断します。たとえば、布基礎、べた基礎、杭基礎のいずれを選ぶかは、地耐力やＮ値などの数値に基づいて決まります。調査会社や専門家に相談して最適な基礎を選びましょう。地盤が軟弱と判断された場合は、地盤改良工事も検討が必要です。たとえば、柱状改良工法や鋼管杭工法などがあり、工法によって費用や工期が異なりますので、当該情報をもとに判断してください。誤った対応は建物の傾きや不同沈下のリスクを高めるため、慎重に進めることが重要です（例示: 調査報告書をもとに基礎形式を選定）。

また、地盤リスクが高いと判断された場合、土地購入そのものを再検討する視点も必要です。たとえば、液状化や大きな不同沈下のリスクがあるなら、別の土地を検討するか、改良コストや購入後の安全性を考慮して慎重に進める判断も重要です。不安が大きい場合は、第三者によるセカンドオピニオンを活用すると、改良の必要性や工法の妥当性を客観的に評価できます。これにより、過剰な改良を避けることも可能です（同様に調査結果に応じた対応として）。

安心して購入を進めるためには、信頼できる業者との相談も大切です。地盤調査を依頼した先だけでなく、構造設計や地盤保証制度に詳しい業者とも連携するとよいでしょう。保証制度では、不測の不同沈下や地盤トラブルがあった場合に補修費用などが補償されることもあります。施工後の安心ため、保証期間や内容をしっかり確認しておくことをおすすめします。

これらの対応を通じて、安全かつ安心して住宅購入を進めることができます。まずは地盤調査報告書をもとに、基礎形式や地盤改良、保証について、わかりやすく丁寧に相談できる専門家にご相談されることをおすすめいたします。

まとめ

不動産購入に際しては、土地の地盤リスクを見極めることが非常に大切です。地盤の安全性は、建物の寿命や資産価値に直結します。公開されている情報や地盤調査を活用することで、液状化や不同沈下などのリスクを事前に把握でき、安心して判断を進められます。調査結果に沿った基礎設計や地盤改良などの対策も忘れてはいけません。信頼できる専門家と連携し、万が一に備えた保証内容の確認も重要なポイントです。購入前に一つ一つ確認することで、安心できる新生活への一歩を踏み出しましょう。